東京都江戸川区 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
目次
はじめに
月報司法書士2023年3月号に「よりユーザーが利用しやすい商業制度を目指して~役員任期長期化の弊害とその解説策の提案~」と題して記事が掲載されていました。
日本司法書士会連合会司法書士総合研究所商業登記制度研究部会の皆様が書いた内容です。
今回は、役員の任期についてこの記事も踏まえて紹介していきます。
会社法上の役員の任期は?
会社法が施行される前の商法時代においては、株式会社の取締役の任期は2年、監査役は4年でした。
有限会社については、役員の任期はありませんでした。
平成18年の会社法改正で、有限会社がなくなり、取締役の任期も改めて見直しされることになりました。
取締役の任期は原則2年、監査役の任期は4年が原則です。
しかし、すべての株式につき譲渡制限を設けている会社(非公開会社)にあっては、取締役・監査役とも最大で10年まで伸ばすことができるようになりました。
これは、株主の異動が少ない会社の場合、経営維持の安定から任期を伸ばしても特に問題ないという判断から、任期を伸ばしても問題ないと思われます。
なお、有限会社は会社法施行後設立はできなくなりました。
しかし、会社法施行以前から存在していた有限会社は特例有限会社として残っていて、こちらの取締役の任期は改正後もありません。
役員の任期の問題点とは?
会社法が施行されたあとに設立した会社の場合、特にひとり株式会社だと、役員構成も変更がなく、任期を10年にする傾向にあります。
私は、ひとり株式会社の場合であれば、任期を10年にすることには異論はありません。
しかし、共同で会社を設立して、取締役が2名となっている会社の場合は、任期を10年にすると様々な弊害が生じてきます。
例えば、経営の方向の違いから、一方が取締役を退任する場合、任期が長いと、そこまでの役員報酬の支払など、会社の経営を揺るがす問題が発生します。
なので、私見ですが、共同で経営する場合は、任期は短めに設定するのをおすすめします。
意外と共同で経営していきて、分かれている会社を結構見かけているので。
ひとり株式会社でも10年にする弊害とは?
さきほど、ひとり株式会社の場合は、任期を10年にすることには私見ではそれでいいと紹介しました。
しかし、最近、設立後10年経過する会社が増えてきました。
比較的、ひとり株式会社の場合は、会社の生き残り率は高いように感じます。
そこで、忘れがちなのが、役員改選登記。
10年経過すると、自動的に再任されるので、役員変更登記はいらないと思っている方が多いです。
しかし、任期が満了したら、株主総会で再度選び直す必要があります。
一度任期満了して、再度同じ人を選ぶことには何も問題ありません。
逆に任期満了したまま放置してしまうと、最後に登記をして12年が経過したときに、「みなし解散」になってしまうリスクがあります。
「みなし解散」の登記がされてしまうと、会社は清算状態と同じになり、会社運営はできなくなります。
放置してしまうと、会社そのものが無くなってしまいます。
なので、ひとり株式会社の場合、役員の任期の満了時期をしっかり把握しておくことが重要となります。
登記を忘れてしまうと「過料」が発生し、罰金みたいなものがかかります。
こちらの負担は代表取締役個人の負担となり、会社の経費にはできない扱いになるので注意が必要です。
任期について登記事項にすべきではないか?
冒頭の月報司法書士の記事には「役員任期の登記事項化に関する具体的提案」がありました。
私もこの意見に賛成ですし、以前も役員の任期は登記事項にすべきではないかと書いていました。
個人的には、上記記事には任期満了年を記載することにしていますが、個人的には、役員の任期を定めたほうがいいと思っています。
ただ、役員の任期は個別に定款で定めることができると解されているので、上記記事のように「任期満了年の記録に関する申出」の方式でもいいかもしれません。
いずれにしても、登記簿で会社の任期を知ることができるのは、ひとり株式会社の経営者にとっても非常に分かりやすいのでいいかと思います。
ひとり株式会社の経営者は会社設立後定款を細かく見る方は少ないように感じます。
まとめ
会社設立後の役員の任期について、第三者に公示させるのも、この会社運営しているのかわかるのでいいのではないでしょうか。
経営者も次の役員変更登記をいつすべきかわかるので「過料」の問題も生じません。
個人的には「役員の任期に関する事項」を登記事項に盛り込むべきだと考えます。
今回は
『【ひとり株式会社】株式会社の役員の任期を登記事項にすべきではないか?江戸川区の司法書士が解説』
に関する内容でした。
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