東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
今回は商業登記についての
マニアック論点のことを書きます。
募集株式の第三者割当決議で、
取締役会非設置会社で、株式の割当てを
行う場合についての論点です。
第三者割当による募集株式の発行の手続の流れ(原則)
この論点を説明する前に、
まずは、第三者割当による募集株式の
発行の流れを確認しておきます。
今回は取締役会非設置会社を
想定しています。
(募集株式の手続の流れ(原則))
株主総会の特別決議
↓
募集株式の引受けの申込みをしようとするものの通知
↓
募集株式の引受けの申込み
↓
募集株式の割当の決定
(取締役会非設置会社の場合は株主総会特別決議)
↓
募集株式の割当ての通知
↓
出資の履行
↓
登記申請
(払込・給付期間(又は払込・給付期間の末日から2週間以内)
まずはこの流れを押さえておいてください。
募集事項決議と割当決議は別個のもの
会社法では、第三者割当の場合、
「募集事項決定」と「割当ての決定」は
別個の手続となっています。
なので、株主総会で募集事項を決定し、
その後株式の申し込みがあり、
株式申込みがあったあとでないと、
株式割当て決議はできないことに
一応はなります。
しかし、募集事項の決定段階で、すでに
申込者及び株式を引き受ける人が
確定していることも多々あります。
そこで、募集事項を決定する際に、
すでに分かっている申込人による申込みが
あったことを条件として、募集株式の
募集事項決定の際の株主総会で、
株式割当決議を行うことが可能です。
法務省の職員の方のブログを見ていると、
補正事例で
「申込みがあったことを条件として
株式割り当てる」
旨の記載がないと補正の対象となる
ということが書かれていました。
つまり、募集株式決定事項を第1号議案とし、
割当決議を第2号議案とした場合、
その第2号議案に「申込みを条件として
割り当てる」というのがないとダメです
という趣旨です。
これについては、
司法書士の金子先生や
内藤先生のブログでも意見がでています。
個人的な意見ですが、募集株式決定事項に
割当方法が書いてあれば、その人に
割り当てることが明らかであり、
割当決議に際し、わざわざ「条件」という
文言がないだけで補正とするのは
いかがなものかと思います。
理由は、すでに割当方法が募集株式の
決定事項から明らかであり、
2号議案の割当て決議は
正直会社法上の手続にのっとり
行われているに過ぎないからです。
もし、募集株式の決定事項に
割当方法がなければ、「条件として
割り当てる」旨の文言がなければ、補正と
なると言われても仕方ないかもしれません。
まとめ
正直、商業登記を担当する法務局の職員も
少ないようで、専門性を兼ね備えた職員が
減っているのは問題ではあります。
そこは、法務省の方で対策をきちんと
取らないといけないと思います。
私も、法務局の判断を困らせるような
補正事項を減らす努力はしないといけない
と反省しつつ、業務を邁進します。
さて、取締役会非設置会社の募集株式の
割当決議についてですが、
法務局で判断されている以上、
「申し込みがあることを条件として
割り当てる」
がないと、今後は補正の対象になると
思います。
とはいっても、議事録から条件で決議を
していることが読み取れれば、上記の記載
がなくても問題ないように思えるのですが
いかがでしょうか。
参考投稿
募集株式の発行(取締役会非設置・第三者割当)に係る条件付決議の記載について(法務省職員の方と思われるブログ)
募集株式の発行手続における二段階の決議と条件付割当決議(内藤先生のブログより)
参考書籍
募集株式と種類株式の実務【第2版】
金子 登志雄,富田 太郎 中央経済社 2014-05-21
|
株式・種類株式<第2版> (商業登記全書)
森木田一毅,岡田高紀 中央経済社 2015-09-19
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