「長期金利3%突破」で住宅ローン相談殺到 ―― 実家の相続登記、放置していませんか?

はじめに

2026年9月1日、長期金利が一時3%を突破しました。1996年以来、実に30年ぶりの高水準です。住宅ローンの借り換えや新規借入を検討する人からの相談が金融機関や住宅ローン比較サービスに殺到しているというニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。

「金利が上がる前に住宅を購入したい」「変動と固定、どちらを選ぶべきか」――こうした声の裏で、もうひとつ増えている相談があります。それが「実家を売って、住宅購入の頭金に充てたい」というものです。

しかし、この選択肢には見落とされがちな落とし穴があります。相続登記が済んでいなければ、実家は売れません。本記事では、金利上昇局面だからこそ急ぎたい相続登記の実務ポイントを、司法書士の立場から整理します。

金利上昇で「実家を売って頭金に」という選択肢が現実味を帯びる

住宅金融支援機構が発表した長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の2026年9月の適用金利は、現行制度になった2017年10月以降で最高となりました。変動金利との金利差も拡大しており、住宅ローン比較サービスには通常の倍近い問い合わせが寄せられているとの報道もあります。

返済負担を抑えるために頭金を厚くしたい、あるいは自己資金比率を上げてより有利な金利条件を引き出したい――そうした事情から、「親から相続した実家を売却して住宅購入資金に充てる」という選択肢を検討する相談者が、今後さらに増えることが予想されます。

相続登記が済んでいなければ、実家は売れない

不動産を売却するには、登記名義を売主自身に移しておく必要があります。相続で取得した実家であっても例外ではありません。親名義のまま放置されている実家は、そのままでは買主への所有権移転登記ができず、売買契約そのものが成立しません。

「そのうち相続登記をすればいい」と後回しにしてきた実家ほど、いざ「今すぐ売って頭金にしたい」という段階になってから相続登記に着手すると、想定以上に時間がかかるケースが少なくありません。

相続登記完了までにかかる主な工程

工程内容目安期間
戸籍収集被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍を収集2週間〜1か月
遺産分割協議相続人全員で誰が実家を取得するかを協議・合意相続人の状況により数週間〜数か月
遺産分割協議書作成・署名押印相続人全員の実印・印鑑証明書を取得1〜2週間
相続登記申請法務局へ申請、登記完了1〜2週間

相続人全員の協力がスムーズに得られるケースでも、戸籍収集から登記完了まで1〜2か月程度は見ておく必要があります。金利動向を見ながら住宅購入のタイミングを計りたい方にとって、この期間は決して短くありません。

2024年の相続登記義務化との関係

2024年4月から、相続登記は義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしないと、正当な理由なく怠った場合には過料の対象となる制度です。

「売る予定がないから」「まだ急いでいないから」と相続登記を先送りしている実家をお持ちの方は、この機会に一度状況を確認しておくことをおすすめします。特に次のようなケースは、着手までに時間がかかりやすい典型例です。

相続登記が長引きやすいケース

  • 数次相続:親の相続手続きをしないまま、その相続人(自分の兄弟姉妹など)も亡くなっている場合。相続人の人数が増え、戸籍収集・協議の手間が大幅に増加します。
  • 相続人の一部と連絡が取れない:疎遠な親族や音信不通の相続人がいる場合、所在調査や場合によっては家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
  • 共有名義での相続:複数の相続人で実家を共有する形で登記した場合、将来の売却には共有者全員の同意が必要になり、単独での売却ができません。
  • 遺産分割協議がまとまらない:不動産の評価額や取得希望者が分かれ、協議が長期化するケース。

今すぐできること

住宅購入のタイミングを金利動向に合わせて計画したい方は、まず実家の相続登記が完了しているかどうかを確認してください。未了であれば、戸籍収集や相続人調査など、時間のかかる工程から先に着手しておくことで、いざ売却を決断した際にスムーズに動けます。

数次相続や共有名義など、複雑な事情を抱えているケースほど、早めに専門家へ相談することで選択肢を広く保てます。

まとめ

長期金利3%突破のニュースは、新規に住宅を購入する層だけでなく、「実家を売って頭金にしたい」と考える層にとっても他人事ではありません。相続登記が未了のままでは、いざというときに売却という選択肢そのものが使えなくなってしまいます。

2024年の相続登記義務化も踏まえ、実家の名義がどうなっているか、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。


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この記事を書いた人

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。