相続登記、いくらかかるの?——司法書士が現場で見てきた『絶対にかかるお金』の話

「相続登記って、結局いくらかかるんですか?」

この質問、現場で一番多く聞かれます。

インターネットで調べると「5万円〜」「10万円〜」「ケースによります」といった曖昧な情報ばかり。結局、何がどれだけかかるのかわからない。

今回は、実務の現場から「絶対にかかるお金」と「削れるお金」を正直にお伝えします。

登録免許税——削れない、絶対にかかるお金

相続登記でまず知っておくべきは、登録免許税です。

これは国に払うお金で、金額は決まっています。

登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 0.4%

たとえば、評価額2,000万円の不動産なら、

2,000万円 × 0.4% = 8万円

これはどの司法書士に頼んでも、自分でやっても、同じ金額がかかります。

「安い司法書士を探せば節約できる」と思っている方がいますが、登録免許税は節約できません。

相続する不動産が複数あれば、その分だけかかります。土地と建物それぞれに評価額があるので、思っていたより高くなることもあります。

戸籍収集費用——意外と見落とされるお金

相続登記には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍が必要です。

これが、思いのほか費用がかかります。

戸籍1通の取得費用は450円〜750円。でも問題は枚数です。

転籍を繰り返している方の場合、戸籍が10通以上になることも珍しくありません。

さらに郵送で取り寄せる場合は切手代も必要です。

相続人が複数いれば、各相続人の戸籍も必要になります。

この実費は、どこに頼んでも変わりません。

「自分でやれば無料」は本当か——現場から言わせてください

SNSやブログで「相続登記、自分でできました!」という投稿を見たことがある方もいると思います。

正直に言います。

⚠️ あの投稿、参考にしないでください。

理由があります。相続登記の難易度は、家族の状況によって天と地ほど違います。

「自分でできた」という方の多くは、相続人が配偶者と子ども1〜2人、不動産も1件、揉め事なし、というシンプルなケースです。

でも現実の相続は、そんなにシンプルではないことが多い。

複雑になりやすいケースの例

① 前婚の子がいる

被相続人に離婚歴があり、前の配偶者との間に子どもがいる場合、その子も相続人です。

連絡先もわからない、顔も知らない相続人と書類をやり取りしなければなりません。

② 相続人がすでに亡くなっている

子どもが親より先に亡くなっていた場合、その子どもの子(孫)が代わりに相続人になります(代襲相続)。

戸籍をさかのぼる範囲が一気に広がります。

③ 養子がいる、認知した子がいる

戸籍の読み方を知らないと、相続人を見落とす可能性があります。

見落としたまま登記すると、後から大きなトラブルになります。

④ 不動産が複数の市区町村にまたがっている

評価証明書を複数の自治体から取り寄せ、それぞれの法務局に申請する必要があります。

「自分でできた」という投稿の方と、あなたの家族の状況は違います。

同じやり方で同じ結果になるとは限りません。

実務の現場で見ていると、「自分でやろうとして途中で詰まった」「法務局で補正を求められて何度も往復した」「書類が揃わず、半年以上かかってしまった」というケースが少なくありません。

その間にかかった時間、交通費、精神的な消耗。

それも立派なコストです。

司法書士報酬——ここだけが「交渉できる部分」

司法書士報酬は事務所によって異なります。

相場は3万円〜10万円程度。不動産の数や相続関係の複雑さで変わります。

ただ、報酬を極端に削ることにはリスクもあります。

「安さだけで選んだら、連絡が取れなくなった」「書類が揃わず手続きが止まった」という相談が、実際に来ることがあります。

価格と品質のバランスを見ることが大切です。

結局、いくらかかるの?

シンプルなケース(不動産1件、相続人2〜3名)で目安を出すと、

費用の種類 目安
登録免許税 評価額の0.4%(例:2,000万円 → 8万円)
戸籍・住民票等の実費 5,000円〜15,000円程度
司法書士報酬 10万円程度
合計の目安 15万円~

これが「最低ラインのリアルな数字」です。

費用を惜しんだ結果、どうなるか

私がいちばん心配しているのはここです。

2024年4月から、相続登記が義務化されました。放置すると、最大10万円の過料(罰則)が科される可能性があります。

費用を惜しんで放置した結果、罰則を受けた上に登記費用もかかる。そういうケースが今後増えてくると思っています。

「費用がかかるのはわかった。でも、今すぐ動く必要があるのか」

答えはシンプルです。

義務化されている以上、動かない選択肢はありません。

まとめ

  • 登録免許税(評価額の0.4%)は絶対にかかる
  • 戸籍収集の実費も削れない
  • 削れるのは司法書士報酬だけ、でも安さだけで選ぶリスクもある
  • 「自分でできた」という投稿は、あなたの家族の状況とは違う可能性が高い
  • 相続登記は義務化済み。放置は罰則の対象になる

費用のことで悩んでいる方は、まず一度相談してみてください。状況によっては、思ったより費用を抑えられる場合もあります。

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。