「親が亡くなって実家を相続したけど、名義変更ってしなきゃいけないの?」
そう思っている方に、まず知っておいていただきたいことがあります。
2024年4月1日から、相続登記(不動産の名義変更)が法律上の義務になりました。
これまでは「いつやってもいい」「やらなくても罰則はない」とされていた相続登記ですが、法律が変わりました。
やらないと10万円以下の過料(ペナルティ)の可能性があります。
この記事では、船堀を拠点に相続登記を60件以上担当してきた司法書士の私が、義務化の内容・期限・罰則・手続きの流れをわかりやすく解説します。
目次
相続登記の義務化とは?何が変わったのか
これまでの問題——「放置された不動産」が全国に
相続登記がなぜ義務化されたのか。背景を知ると、この法改正の意味がよくわかります。
これまで日本では、相続が発生しても不動産の名義変更をしないまま放置するケースが非常に多くありました。
「実家は誰も住んでいないし、売る予定もないから」 「手続きが面倒だから、そのうちやればいい」 「名義変更しなくても罰則がないから、後回しでいいか」
こうした理由で放置された結果、全国に「所有者不明土地」が大量に発生しました。
国土交通省の調査では、所有者不明土地の面積は九州全体を超えるとも言われています。
所有者不明土地は、公共工事や災害復旧の妨げになるだけでなく、周辺の土地の価値を下げる原因にもなります。
この問題を解消するために、2024年4月から相続登記が義務化されました。
義務化の内容——3年以内に申請が必要
相続登記の義務化の内容は、シンプルです。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。
これだけです。
ただし、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
過去の未了登記にも適用される
2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ登記をしていないケースも義務化の対象です。
この場合の期限は2027年3月31日まで。
「祖父が亡くなったときから実家の名義が変わっていない」「親が亡くなって何年も経つけど登記していない」という方は、2027年3月末までに手続きが必要です。
相続人申告登記という簡易な手続きも新設された
遺産分割がまとまっていない場合でも、「自分が相続人であること」を法務局に申告するだけの「相続人申告登記」という簡易な手続きが新設されました。これを行うことで、3年以内の申請義務を果たしたとみなされます。
ただし、最終的には遺産分割協議が成立した日から3年以内に、正式な相続登記を申請する必要があります。
期限を守らないとどうなる?罰則について
正当な理由がないのに期限内に相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
「可能性がある」というのは、自動的に全員に課されるわけではなく、法務局が職権で催告し、それでも正当な理由なく申請しない場合に過料の手続きが取られる仕組みだからです。
とはいえ、「罰則があるかもしれない」という状況に置かれること自体、精神的に良いものではありません。
また、放置し続けることで次世代に大きな負担を残すことになります。
放置するともう一つ怖いこと——相続人がネズミ算式に増える
名義変更をしないまま時間が経つと、相続人がどんどん増えていきます。
例えば、親が亡くなって実家の名義が変わらないまま10年が経過したとします。
その間に相続人の一人が亡くなると、その人の子どもたちが新たな相続人として加わります。
気づいたときには、見ず知らずの親族10人以上の同意が必要になっていた——というケースは、実務でも珍しくありません。
将来、実家を売りたいと思っても、全員の同意が取れずに売れなくなってしまうのです。
遠方の実家を持つ方が特に注意すべきこと
相続登記の義務化で、特に影響を受けやすいのが遠方に実家がある方です。
「親が地方に住んでいて、自分は都市部にいる」「実家には誰も住んでいない」という状況では、不動産の存在自体を軽視しがちです。
しかし、住んでいない・使っていない不動産でも、義務化の対象であることは変わりません。
また、遠方の実家の場合、次のような問題も生じやすいです。
- 親の死後、不動産の登記簿を確認したことがなく、名義人が誰かすら把握していない
- 祖父母の代から名義が変わっておらず、すでに相続人が10人以上になっている
- 固定資産税の通知は来るが、手続きを後回しにしている
思い当たることがある方は、早めに動くことをおすすめします。
相続登記の手続きの流れ
相続登記の手続きは、大きく次の流れで進みます。
STEP 1:戸籍の収集(相続人の確定)
まず、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人が誰かを確定します。
兄弟姉妹が相続人になる場合は、親の戸籍も必要になります。
戸籍の収集は、本籍地の市区町村役場に請求します。
遠方の場合は郵送での請求も可能です。
昨今は「広域交付制度」もありますので、活用してみてください。
STEP 2:遺産分割協議(誰が不動産を取得するかを決める)
相続人全員で話し合い、誰が不動産を取得するかを決めます。
これを遺産分割協議といい、合意内容を遺産分割協議書としてまとめます。
全員の実印と印鑑証明書が必要です。
遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って手続きを進めます。
STEP 3:登記申請書の作成と法務局への申請
遺産分割協議書や戸籍などの必要書類をそろえ、登記申請書を作成して法務局に申請します。
申請は、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対して行います。
窓口持参のほか、郵送やオンライン申請も可能です。
STEP 4:登記完了・登記識別情報の受領
申請から1〜2週間程度で登記が完了します。完了後、新たな所有者に「登記識別情報通知」(いわゆる権利証)が交付されます。
費用はいくらかかる?
相続登記にかかる費用は、大きく2種類です。
登録免許税(国に納める税金)
不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
例えば固定資産税評価額が1,000万円の不動産であれば、登録免許税は4万円です。
司法書士報酬
司法書士に依頼する場合の報酬は、不動産の数・相続人の数・戸籍収集の難易度などによって変わります。
当事務所では相続登記を12万円〜承っています(登録免許税・実費別)。
よくある質問(Q&A)
Q. 相続登記をしないと、固定資産税はどうなりますか?
A. 固定資産税は登記の有無に関わらず、実際に不動産を取得した相続人に課税されます。
名義変更をしていなくても、固定資産税の支払い義務はなくなりません。
むしろ名義が古いままだと、市区町村からの通知が届かず、滞納になるリスクがあります。
Q. 遺産分割がまとまっていない場合、どうすればいいですか?
A. 前述の「相続人申告登記」を活用してください。
まず相続人申告登記で3年の義務を果たし、遺産分割がまとまったタイミングで正式な相続登記を申請する流れが現実的です。
Q. 相続人が海外在住の場合、手続きはどうなりますか?
A. 海外在住の相続人も手続きに参加できますが、印鑑証明書の代わりに在外公館(大使館・領事館)で発行されるサイン証明書が必要になるなど、国内の手続きより時間と手間がかかります。
早めに司法書士に相談されることをおすすめします。
Q. 相続登記は自分でできますか?
A. 法律上は本人申請も可能です。
ただし、戸籍の収集・遺産分割協議書の作成・申請書の記載など、手続きは複数にわたり、不備があると法務局から補正を求められることもあります。
時間と手間を考えると、司法書士に依頼するのが現実的です。
Q. 2027年3月の期限に間に合わなかったらどうなりますか?
A. 即座に過料が課されるわけではありませんが、法務局から催告状が届き、正当な理由なく手続きをしない場合は過料の手続きが取られる可能性があります。
期限を過ぎてしまっても、早めに手続きを進めることが大切です。
まとめ
- 2024年4月から相続登記が義務化。相続を知った日から3年以内に申請が必要
- 2024年4月より前の未了登記は2027年3月31日が期限
- 正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の可能性あり
- 放置すると相続人がネズミ算式に増え、将来売りたくても売れなくなる
- 遺産分割がまとまっていない場合は「相続人申告登記」を活用する
「うちの実家は大丈夫かな」と思った方は、早めに確認することをおすすめします。
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司法書士・行政書士 桐ケ谷淳一|相続登記60件以上対応

