実質的支配者リストの創設 株主名簿は作成して会社に保管する必要があります。 その理由を司法書士が解説します

株主名簿を整備して保管しないといけない理由は?

東京都江戸川区葛西駅前 ひとり会社設立や小さい会社の企業法務・相続専門 資格試験アドバイザー 司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。

はじめに

会社を設立したら、必ずしなければいけない義務のひとつに「株主名簿の保管」があります。

株主名簿を会社に保管していないと過料に科されると会社法で規定されています。

なぜ「株主名簿の整備・保管」が必要なのでしょうか。

株主総会で登記すべき事項を決議した際にいわゆる「株主リスト」というものを添付しなければならず、それを作成するに当たり、「株主名簿」が資料となります。

さらに、令和4年早々、新しい制度、「実質的支配者リスト制度」ができるために株主名簿の準備が必要となってくるのです。

株主名簿を整備して保管しないといけない理由は?司法書士が説明します

令和4年から新しい制度「実質的支配者リスト制度」が始まります!

株主名簿の整備が必要な理由は、令和4年1月31日から「実質的支配者リスト制度」が始まるからです。

この制度は、法人設立後、会社の継続的な支配者が誰であるか把握するようにとの海外での要請を受けて始まります。

結局趣旨としては、「法人の実質的な支配者が誰か」、「法人の支配者の透明性や資金洗浄等を目的とする法人の悪用を防止する」観点となります。

つまり、「実質的支配者リスト制度」は、法人が犯罪で悪用させないための制度といっていいでしょう。

実質的支配者リスト制度の中身は?

実質的支配者リスト制度は、特例有限会社を含む株式会社が商業登記所の登記官に対して、一定の資料と添付書面を提出して行う制度です。

注意なのは、たとえひとり株式会社であっても、特例有限会社であっても、実質的支配者リスト制度の対象となることです。

具体的には、当該会社が作成した実質的支配者に関する情報を記載した書面を作成します。

作成した書面を所定の添付書面とともに、法務局に提出します。

その書面を法務局で保管し、また登記官の認証文付きの写しの交付の申出を行うことができます。

対象となる実質的支配者とは誰を指すのか

ひとり株式会社の場合は、株主もひとりなので、その人が実質的支配者となります。

複数人株主がいる場合は、「会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接的に有している自然人」がまずは該当します。

上記に該当する者がいない場合は、「会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接的に有している自然人」が該当します。

繰り返しになりますが、株式会社の規模は大小問わず、さらに特例有限会社も含まれるのが今回の制度のミソと言えるでしょう。

添付書面の一つに「株主名簿」がある なので「株主名簿」の整備は必須

今回実質的支配者リストの申出の際に、添付書面として「株主名簿」が必要となります。

別に法人税確定申告書別表2を添付しても構わない扱いとなっています。

とはいっても、登記簿に記載されている発行済株式総数と別表2の数字があっていない中小零細企業は意外と多いです。

なので、制度が始まる前までに「株主名簿の整備」は必須です。

少数株主がいる場合に、その者を会社は把握しているのか、把握していない場合はどう対処するかも視野に入れて考えないといけません。

そもそも商業登記で「株主リスト」が添付書面となっているので、多くの会社では「株主名簿」を整備しているはずです。

しかし、株主名簿の存在自体知らない経営者もいるので、ぜひこの機会に「株主名簿」を作成して保管しましょう。

実質的支配者リスト制度は何に使うのか?

法務省から公表されている事例としては、金融機関で提出を求められたときに利用する場合を想定しています。

これから融資や取引を行う上で、この申告書を早い段階で取引先の金融機関から求められることが考えられます。

なので、実質的支配者制度の開始と相まって、株主名簿の整備も早めに対応しておかないといけないということになります。

予想ですが、この制度がスタートするときに、取引先の金融機関で、早々に「実質的支配者リスト」を求められることが想定されます。

ある資料を読んでいたら、コンプライアンスの順守が強く求められている企業から提出を求められる可能性もあることが記載されていました。

これは推定ですが、ある企業が事務所を借りる際も、法人の透明性の確保の判断から「実質的支配者リスト」を求められることもありうるかもしれません。

まとめ

令和4年1月31日から始まる「実質的支配者リスト制度」。

どの規模の株式会社や特例有限会社も対象となります。

株主名簿が添付書面となるので、株主名簿を整備していない会社はこの機会にぜひ「株主名簿」を作成し保管するようにしてください。

株主名簿の整備についてご不明点はぜひ司法書士にご相談ください。

今回は
『株主名簿は作成して会社に保管する必要があります。実質的支配者リストの創設 その理由を司法書士が解説します』
に関する内容でした。

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参考書籍

中小企業における株式管理の実務

後藤孝典/野入美和子 日本加除出版 2015年05月
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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。

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