東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。
目次
はじめに
前回のブログでは会社分割の概要と
事業承継における会社分割の例を
紹介しました。
お読みいただけたでしょうか?
会社分割は合併と異なり、今ある会社の
権利義務の一部又は一部を別の会社に
承継させるので、承継された方の会社は
消滅しません。
そこが一つ問題として残ります。
いわゆる
「濫用的会社分割」
「詐害的会社分割」
と言われる問題です。
今回問題になった濫用的会社分割の事例とは?
今回裁判で問題になった会社分割の例を
紹介します。
ある会社で従業員と労働組合を
潰すために、会社分割を用いた例です。
今回の事案はA事業とB事業のうち、
B事業を新設した会社に事業を承継させる
新設分割をしたあとに、
もともとあった会社を閉鎖して
しまいました。
それに組合員や組合が怒り、
裁判沙汰に発展してしまったという例です。
よくある会社分割をめぐる問題とは・・・
会社分割については、生き残り策として
分割会社に不採算事業を残し、
採算がとれる事業を新しい会社に移す
方法がありました。
分割会社から承継会社に債務が承継される
ことになれば、その債務に関する債権者は
債権者保護手続が必要となり、労働者には
法律に基づいた手当がされます。
ただ、その方法を取ると、分割会社の
債権者や労働者は何も対抗手段を
取れないことにもつながり、
詐害的・濫用的会社分割が問題に
なりました。
そこで、平成27年の会社法改正で、
分割会社の債権者も、承継会社に対して、
直接請求をすることが出来ました。
労働問題についても、平成27年12月11日
大阪高裁の判決で責任が認められた
格好となりました。
会社分割は正しく使う必要が出てきた契機となった事件
この件で、会社分割手続に積極的に
関与した司法書士についても、
詐害的・濫用的会社分割の共同不法行為
責任を負うことに判示されました。
司法書士として企業法務にどこまで
携わるべきかを考えさせられる事件で
あると個人的には感じました。
まとめ
会社分割については、使いようによっては
債権者を害する危険があることを経営者に
伝える必要があると思います。
テクニックに走ってしまうと問題が
大きくなってしまう危険があるとこの事案
をみて強く感じました。
会社分割については中小零細企業でも
事業承継で使う場面が今後は増えてくると
思います。
どのような事業を承継させるのか、
従業員の問題はどうするのか
しこりの残らないように行うことが
重要です。
参考書籍
第7巻 組織再編の手続―法務企画から登記まで<第2版> (【商業登記全書】)
金子登志雄 中央経済社 2016-07-01
|
会社分割の理論・実務と書式―労働契約承継、会計・税務、登記・担保実務まで (事業再編シリーズ)
今中 利昭 民事法研究会 2013-01-09
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