法定相続情報一覧図について、「便利です」で終わらせずに、作る判断の基準・戸籍収集の分業・実務でつまずくところを整理しました。あわせて、印刷して使える資料を3点用意しています。
目次
制度の要点
| 手数料 | 無料。交付を受ける通数にも制限なし |
| 申出できる人 | 被相続人の相続人(またはその相続人) |
| 代理人になれる人 | 親族のほか、司法書士・弁護士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士 |
| 申出先 | 次のいずれか1つ。(1)被相続人の本籍地(死亡当時)(2)被相続人の最後の住所地(3)申出人の住所地(4)被相続人名義の不動産の所在地 |
| 再交付 | 申出日の翌年から5年間、同じ登記所で可能。申し出られるのは最初の申出人のみ |
| 使えない場合 | 被相続人または相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出できない場合 |
作るかどうかは「窓口の数」で決まる
一覧図は万能ではありません。判断基準はひとつだけで、相続手続きで回る窓口がいくつあるかです。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 預貯金が複数行+不動産あり | 作る。回る先の数だけ通数をもらえば同時並行で進められる |
| 不動産の名義変更のみ | 作らない。戸籍の束をそのまま登記に使えば足りる |
| 預貯金1行のみ | 作らない。一覧図の申出という工程が増えるだけになる |
| 相続税の申告がある | 作る。税理士へ渡す分と各窓口分をまとめて確保できる |
一覧図を作っても、戸籍集めは1通も減りません。申出には被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の戸籍が必要です。楽になるのは戸籍がそろったあとの窓口回りだけで、相続手続きで実際に時間を食う工程は減らない。ここを取り違えると、期待した効果が出ません。
一覧図の記載事項
★ここに画像ブロックを入れてください 「法定相続情報一覧図_記載事項.png」をアップロードし、キャプションに「法定相続情報一覧図の記載事項。用紙はA4縦、手書きでも差し支えありません。」と入れます。この段落は削除してください。
- 表題 「被相続人○○○○法定相続情報」と記載します。
- 被相続人 最後の住所、出生年月日、死亡年月日、氏名。最後の本籍は任意ですが、書いておくと提出先で照合しやすくなります。
- 相続人 氏名、出生年月日、被相続人との続柄。住所は任意です(後述)。申出人となる方には「(申出人)」と付記します。
- 作成者 作成年月日、作成者の住所・氏名、記名押印。
- 下から約5cmの余白 登記官の認証文が入るため、この範囲には何も記載しません。ここを埋めてしまって作り直しになるのが、よくあるつまずきです。
相続人の住所を記載するかどうか
| 記載する | 記載しない | |
|---|---|---|
| 追加書類 | 相続人全員の住民票記載事項証明書 | 不要 |
| その後 | 相続登記で住所証明情報の提出を省略できる場合がある | 登記のたびに住民票が必要 |
| 向き | 不動産の名義変更を予定している | 預貯金の解約のみで終わる見込み |
不動産の手続きがあるなら記載しておくほうが、後の書類が減ります。ただし相続人が多いと住民票をそろえる負担が先に来るので、人数と手続きの数を見て決めることになります。
戸籍収集は「依頼者と専門家の分業」で決まる
令和6年3月1日から戸籍の広域交付が始まり、最寄りの市区町村の窓口で本籍地の違う戸籍もまとめて請求できるようになりました。ただし実務上、ここには重要な制約があります。
広域交付は、郵送でも代理人でも請求できません。
請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、しかもご本人が顔写真付きの身分証明書を持って窓口に行く必要があります。専門家の職務上請求でも使えません。つまり広域交付は「依頼者本人にしかできない工程」です。
この制約は、裏返せば分業の設計図になります。
| 依頼者本人に窓口で取得していただく | 専門家が職務上請求で取得する |
|---|---|
| 被相続人の戸籍(直系の範囲)、ご自身・お子さん・ご両親の戸籍 | 兄弟姉妹・甥姪の戸籍、コンピュータ化されていない除籍・改製原戸籍、遠方の本籍地への郵送請求 |
依頼者が一度窓口へ行ける状況であれば、そこで取れる分をまとめて取得していただくのが最短です。取れないものだけを専門家が引き受ける。この切り分けを最初の面談で伝えておくと、収集期間が目に見えて縮みます。
お子さんがいないご夫婦では、広域交付がほとんど効かない
相続人が兄弟姉妹や甥姪になるケースでは、事情が変わります。
- 兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外。本籍地ごとの郵送請求になります。
- 他に兄弟姉妹がいないことを示すため、被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの戸籍が必要になります。ここで面識のない兄弟姉妹が判明することがあります。
- 直系尊属が全員亡くなっていることを示す戸籍も要ります。
- 兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その方の一生分の戸籍と、甥姪の戸籍が加わります。
集める戸籍が20通を超えるのは珍しくありません。制度が便利になったにもかかわらず、いちばん重いケースでその恩恵を受けられないという構造になっています。
実務でつまずくところ
一覧図に書けないこと
| 状況 | 一覧図に加えて必要なもの |
|---|---|
| 相続放棄をした人がいる | 相続放棄申述受理証明書。一覧図には放棄した人もそのまま記載されます |
| 法定相続分と異なる分割 | 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書 |
| 遺言がある | 遺言書(自筆証書は検認済み、または保管制度の証明書) |
| 数次相続 | 被相続人ごとに別々の一覧図。1枚にまとめることはできません |
| 相続分の指定・廃除 | それを示す書面。法務局の様式に記載例はありません |
法定相続情報番号が使えるのは不動産登記だけです。
一覧図には番号が付きますが、番号のみで手続きができるのは登記申請に限られます。預貯金や年金では一覧図の写しそのものの提出が必要です。通数は窓口の数だけ確保しておくのが実務上の鉄則になります。無料なので惜しむ理由がありません。
作り直しになりやすい点
- 下から約5cmの余白を潰してしまった
- 相続人の戸籍を被相続人の死亡日より前に取得していた(死亡日以後のものが必要)
- 被相続人の住民票の除票が廃棄されていた(戸籍の附票で代替できる場合があります)
- 鉛筆で作成した(黒のボールペンまたは黒インク)
ダウンロード資料
いずれも無料です。印刷してお使いいただけます。
- 法定相続情報一覧図 申出準備チェックリスト(PDF)
申出先の選び方、必ず必要な書類と場合により必要な書類、提出前の最終確認まで。被相続人と申出先を書き込める欄つき。 - 使える場面・使えない場面の早見表(PDF)
手続きごとに使えるかどうかを一覧に。「一覧図だけでは足りない場面」と、そのとき何が要るかを整理しています。 - 戸籍収集の段取り表(PDF)
広域交付で取れるもの・取れないものの対照表と、本籍地の変遷を書き込める記入用紙。兄弟姉妹が相続人になる場合の追加分も掲載。
戸籍収集からお引き受けしています
お子さんのいないご夫婦の相続、数次相続、相続人が多数にわたる案件など、ご自身での収集が難しいケースを多く扱っています。相続登記の取扱いは累計60件以上。
司法書士・行政書士きりがや事務所(東京都江戸川区船堀六丁目2番12号/TEL 03-6808-7091)
出典 法務局「法定相続情報証明制度について」/「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」/「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」、法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」。いずれも令和8年9月時点の内容です。提出先ごとの取扱いは各機関にご確認ください。
