目次
はじめに:2026年4月に始まった、62年ぶりの見直し
2026年4月20日、国税庁が「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」を開催しました。
自社株(非上場株式)の評価ルールを根本から見直す議論がスタートしたのです。
現行ルールが定められたのは1964年(昭和39年)。実に62年ぶりの抜本的な見直しです。
年内に議論をまとめ、2027年度税制改正で調整する方針が固まっています。
本記事では、この見直しの背景・内容・経営者への影響を、司法書士の目線から解説します。
この記事でわかること:
- なぜ今、自社株の評価ルールが見直されるのか
- どんな節税スキームが封じ込められるのか
- 司法書士から見た「登記リスク」という盲点
- 経営者が今すぐ確認すべき3つのこと
1. 自社株の評価ルールとは何か
非上場株式の評価方法
上場株式は市場価格で評価できますが、非上場会社の株式(自社株)は市場がないため、相続税・贈与税の計算のために評価ルールが必要です。
現行ルールでは、会社の規模によって評価方法が異なります:
| 会社規模 | 評価方法 |
| 大会社 | 類似業種比準方式 |
| 小会社 | 純資産価額方式 |
| 中会社 | 両者の併用 |
問題の核心:類似業種比準方式の「穴」
類似業種比準方式を使うと、純資産価額(会社の本来の資産価値)と比べて、評価額が約4分の1程度まで極端に低くなることがあります。
つまり、「大会社扱い」にすることができれば、自社株の評価額を大幅に下げて相続税・贈与税を節税できる——という構造が生まれました。
2. なぜ今、見直しが必要なのか
横行した「過度な節税スキーム」
この「会社規模によって評価額に大きな差が出る」というルールの穴を突いて、一部で過度な節税が行われてきました。
具体的には:
- 意図的な組織再編で会社規模を大きく見せる
- 無議決権株式を活用して株価を圧縮する
- 持株会社スキームを利用した評価額の引き下げ
国税庁はこうした「行き過ぎた節税」を問題視し、公平性を保つために見直しを進めています。
会計検査院の指摘
会計検査院は「取引相場のない株式の評価について、異なる規模区分の評価会社が発行した株式を取得した者間での評価の公平性を考慮して、評価制度の在り方を検討することが肝要」との所見を述べています。
3. 司法書士から見た「登記リスク」という盲点
ここが他の記事にはない、司法書士目線の視点です。
節税スキームには「登記」が絡んでいた
自社株の節税スキームには、ほぼ必ず登記が絡んでいます:
① 種類株式(無議決権株式)の発行 → 定款変更の登記が必要
② 持株会社スキームの設立 → 会社設立登記が必要
③ 組織再編(合併・分割・株式交換) → 組織再編の登記が必要
登記簿には「証拠」が残っている
法務局の登記簿には、いつ・どんな変更をしたかが全部記録されています。
評価ルールが変わった後、「スキームのために行った登記」が見直しの対象になる可能性があります。
「登記で作ったスキーム」が、ルール変更で無効化されるリスク——これを把握している経営者は少ないのが現状です。
4. 経営者が今すぐ確認すべき3つのこと
確認① 自社の登記簿を取り寄せる
自社の登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得して、以下を確認してください:
- 種類株式(無議決権株式・優先株など)が発行されているか
- 過去に組織再編(合併・分割など)をしたか
- 持株会社との関係がどう登記されているか
登記事項証明書の取得費用:600円(全国の法務局で取得可能)
これらのスキームがある場合、税理士への相談が急務です。
確認② 「今の自社株価」を税理士に試算してもらう
ルールが変わる前の株価と、変わった後の株価を比較しておく必要があります。
「現在の評価額を教えてほしい」と顧問税理士に依頼するだけで確認できます。
ルール変更後に「想定外に高くなった」と後悔しないために、今の数字を把握しておくことが重要です。
確認③ 事業承継のスケジュールを見直す
もし事業承継を計画中で、まだ登記手続きが完了していないなら、スケジュールを見直す必要があります。
新ルールが施行される2027年度前と後では、最適な承継方法が変わる可能性があります。
2027年度税制改正まで、残された時間は約1年半です。
5. 「老活としての事業承継」という視点
会社を経営している60代の方にとって、事業承継は「老活」の最重要テーマです。
多くの経営者が「まだ元気だから」と先送りにしています。
しかし、先送りにしている間に:
- 評価ルールが変わって、想定外の税負担が発生する
- 後継者が税金を払えなくて、承継が頓挫する
- 認知症や突然の病気で、本人が意思決定できなくなる
という事態に陥るケースを、相続・会社設立の現場で何度も見てきました。
事業承継は、経営者が「動ける今」にしかできない準備があります。
まとめ
- 2026年4月、国税庁が自社株評価ルールを62年ぶりに見直す有識者会議を開催
- 節税スキームの「封じ込め」が主な目的
- 節税スキームには登記が絡んでいることが多い(登記に証拠が残る)
- ルール変更前に「自社の登記簿確認」「株価試算」「承継スケジュール見直し」の3つが急務
- 2027年度税制改正まで約1年半——今が動くべきタイミング
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的・税務上の助言ではありません。具体的なご相談は専門家までお問い合わせください。



