2024年4月、相続登記が義務化された。
不動産の相続手続きを放置できなくなった、という認知は少しずつ広がっている。
だが、次の問題がすでに水面下で起きている。
投資信託・NISA・株式といった「金融資産の相続」が、トラブルの新震源地になりつつある。
不動産の相続登記に目が向いている今こそ、金融資産の相続についても同時に考えておくべきタイミングだ。
目次
なぜ今、金融資産の相続が問題になるのか
背景はシンプルだ。
新NISAの普及で、金融資産を持つ一般世帯が急増している。
かつて相続といえば「不動産」が中心だった。土地や建物をどう分けるか、それが相続の主戦場だった。
しかし今後10〜20年で亡くなる世代は、投資信託や株式・NISAを相続財産として残す初めての大規模な世代になる。
手続きの複雑さ、評価方法の選択、口座凍結の問題――不動産登記とはまったく異なるノウハウが必要だ。
準備のない家族が突然直面したとき、何から手をつければいいかわからず、手続きが止まるケースが実務でも増えている。
資産クラス別「相続の落とし穴」
投資信託――口座が凍結される
相続が発生すると、証券口座は事実上凍結される。
遺産分割協議が完了するまで、売却することができない。
市場が急変しても手が出せない。
長期運用で増やした資産が、相続のタイミングで身動きの取れない状態になる。
これが投資信託相続の最大のリスクだ。
また、投資信託の相続税評価は「相続開始日の基準価額」で行われる。
含み益が大きいほど課税対象が膨らむ。
30年かけて増やした資産ほど、相続税も重くなる。
長期運用の成功が、相続税の重さに直結するという皮肉な構造がある。
NISAの相続――非課税は本人限り
ここが最も誤解が多いポイントだ。
新NISAで運用した資産は、本人が亡くなった時点でNISA口座が廃止される。
課税口座に払い出され、時価がそのまま相続税の課税対象になる。
NISAの非課税メリットは「本人が生きている間だけ」だ。
相続人にはそのメリットが引き継がれない。
30年積み立てて大きく増やした資産ほど、この問題は深刻になる。
対策として有効なのが、NISAで増やした資産の一部を生前に生命保険へ組み替えることだ。
死亡保険金には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠がある。
相続人が3人いれば1,500万円を非課税で渡せる。
知っているかどうかで、手元に残る金額が大きく変わる。
株式の相続――評価方法は選べる
上場株式の相続税評価には4つの方法がある。
課税時期の終値、課税時期の月の月平均額、課税時期の前月の月平均額、課税時期の前々月の月平均額、
この中から最も低い評価額を選ぶことができる。
これは知っている人だけが得をするルールだ。何も知らなければ、不利な評価額のまま申告してしまうことになる。
保険の相続――受取人の放置が最大のリスク
生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」として、非課税枠が設けられている。
うまく活用すれば相続税の負担を大きく減らせる有力な手段だ。
しかし実務でよく見るのが、受取人の指定が古いまま放置されているケースだ。
加入当時から家族構成が変わっているのに、受取人変更の手続きをしていない。
離婚・再婚・子の誕生など、ライフイベントのたびに確認が必要だが、忘れられていることが多い。
年に一度、受取人の確認をする習慣をつけるだけで、このリスクは大きく減らせる。
司法書士に相談すべき3つのタイミング
① 親が証券口座を持っていると知ったとき
口座の種類(特定口座・一般口座・NISA口座)によって手続きが異なる。
親が元気なうちに口座の種類と保有資産を確認しておくことが、最大の相続対策になる。
② 遺産分割協議を始める前
金融資産は分割方法の選択肢が複数ある。現物分割・換価分割・代償分割、それぞれにメリットとデメリットがある。
協議を始める前に整理しておかないと、後から覆すことが難しくなる。
③ 相続税の申告期限(10か月)が迫ってきたとき
相続登記と相続税申告は連動している。
司法書士と税理士が連携して対応する案件が増えており、早めの相談が結果的に時間もコストも節約できる。
「不動産だけ」の時代は終わった
相続登記義務化をきっかけに、相続全体を見直す機運が高まっている。
不動産だけでなく、金融資産も含めた「トータルな相続設計」の時代が来ている。
資産を増やすことと、資産を次世代に渡すことはまったく別のスキルだ。
増やすフェーズで成功した人ほど、渡すフェーズの準備を早めに始めてほしい。
ご相談はお気軽にどうぞ。
司法書士・行政書士きりがや事務所(東京都江戸川区船堀) TEL 03-6808-7091
