相続放棄しても生命保険は受け取れる?司法書士が教える「知らないと損する」落とし穴

結論から言います。

相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金は原則として受け取ることができます。

でも、「原則として」という言葉には注意が必要です。

受取人の指定方法によっては受け取れないケースがあり、税金面では思わぬ落とし穴が待っています。

江戸川区船堀で相続登記を専門とする司法書士として、現場で実際によく受ける相談をもとに解説します。

なぜ相続放棄しても生命保険を受け取れるのか

そもそも、なぜ相続放棄をしたのに保険金を受け取れるのでしょうか。

理由はシンプルです。

生命保険の死亡保険金は、亡くなった方の「遺産」ではないからです。

保険金は、保険契約によって受取人に直接支払われる「受取人固有の財産」として扱われます。

相続財産ではないため、相続放棄の影響を受けません。

たとえるなら、「お父さんが生前にあなたへの贈り物を用意していた」ようなイメージです。

お父さんが亡くなったからといって、すでに用意されていた贈り物を返す必要はありません。

受け取れるケース・受け取れないケース

ただし、すべての場合に受け取れるわけではありません。

受取人の指定方法によって結果が変わります。

✅ 受け取れるケース

保険金の受取人として「あなた自身の名前(または続柄:長男・妻など)」が具体的に指定されている場合。

この場合、相続放棄をしても保険金は確実に受け取れます。

❌ 受け取れない・注意が必要なケース

①受取人が「法定相続人」と指定されていた場合

「法定相続人」と一括りに指定されている場合、相続放棄をすると法定相続人の地位を失うため、保険金を受け取れなくなります。

②受取人が「被相続人(亡くなった本人)」だった場合

これが最も危険なケースです。

受取人が亡くなった方本人の場合、保険金は相続財産とみなされます

この保険金を受け取ると、「相続を承認した」とみなされるリスクがあります。

相続放棄をしたはずなのに、保険金を受け取ったことで放棄が無効になる可能性があります。受取前に必ず専門家に確認してください。

税金の落とし穴:非課税枠が使えない

「相続放棄したのだから相続税はかからない」と思っていませんか?

これは大きな誤解です。

相続放棄をしていても、受け取った保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

さらに深刻なのが、非課税枠が使えない点です。

本来、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。

しかし、相続放棄をした人はこの非課税枠を使うことができません。

たとえば、相続人が3人で全員が相続放棄をした場合、1,500万円分の非課税枠が丸ごと消えてしまいます。

司法書士が強調したいこと:生命保険は相続対策の柱になる

ここからが本題です。

相続の現場で感じるのは、生命保険を「相続対策として意識的に使えている家族」と「なんとなく入っているだけの家族」では、その後の手続きのスムーズさが全然違うということです。

生命保険が相続対策として有効な理由

① 遺産分割の対象にならない

現金や不動産は相続人全員で分割協議が必要です。

しかし生命保険の保険金は受取人が単独で受け取れます。葬儀費用や当面の生活費をすぐに確保できるのは大きなメリットです。

② 遺留分対策として活用できる

法定相続人には「遺留分」という最低限の相続分を請求する権利があります。

たとえば「事業を継ぐ長男に全財産を渡したい」と思っても、他の相続人から遺留分を請求される可能性があります。

生命保険を活用することで、他の相続人への「想い」を保険金という形で届けながら、事業承継を円滑に進めることができます。

③ 相続放棄した人への財産の手渡し

借金が多くて相続放棄せざるを得ない状況でも、受取人として指定されていれば保険金を受け取れます。

「借金は引き継がせたくないが、なにも残してあげられない」という状況を避けることができます。

ただし、設計を間違えると逆効果

上で説明したように、受取人の指定を誤ると思わぬ落とし穴にはまります。

「法定相続人」と指定しているケース、受取人が被相続人本人になっているケースは、今すぐ確認して変更することをお勧めします。

まとめ:今すぐ確認してほしいこと

確認事項 チェック
受取人は「法定相続人」ではなく個人名で指定されているか  □
受取人が被相続人本人になっていないか  □
相続放棄を検討中の場合、保険金受取前に専門家に相談したか  □
相続税の非課税枠への影響を理解しているか  □

生命保険は、正しく設計すれば相続対策の強力な柱になります。

しかし設計を誤ると、相続放棄の効力を失うリスクや、想定外の税負担につながります。

「うちは大丈夫だろう」と思わず、一度保険証券の受取人欄を確認してみてください。

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。