後見制度支援信託制度の問題点 遺言書に記載されたことが実現できなくなる? 【江戸川区葛西司法書士の業務日記】

東京都江戸川区葛西駅前
会社設立などの企業法務・相続専門
司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一です。

はじめに


いま「新しい家族信託」(日本加除出版)
を読んでいます。

新しい家族信託―遺言相続、後見に代替する信託の実際の活用法と文例

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「遺言書」を記載すれば何とかなるだろう、
と思っていると意外なところに落とし穴が。


遺言者が認知症になり、
後見開始の審判を受けたときが問題に
なります。


遺言書の有無がはっきり分かっていれば
問題はないのですが・・・


現在裁判所では、後見制度の一環として
「後見制度支援信託制度」
を導入しています。

遺言の有無でこの制度が使えるかどうか
決まってきます。


そもそも「後見制度支援信託」とは
どういう制度なのでしょうか?

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後見制度支援信託とは何か?


後見制度支援信託は、
裁判所が最近勧めているスキーム。


500万円以上の預貯金等を解約させ、
その解約した金銭を信託財産として、
本人の法定代理人である成年後見人と
信託銀行との間で信託契約を締結する
ものです。


金額については裁判所によって
まちまちのようです。


親族後見人が被後見人の財産を
使い込むことを防ぐ
ために、
このような信託を後見制度の一つとして
始めています。


信託をすることで、当然被後見人の
財産とは隔離されることになるので
使い込みされることは防げるという
ことになります。


今では司法書士などの専門後見人が
いる場合でも、後見制度支援信託が
活用されています。

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遺言がある場合には後見制度支援信託は利用できない


後見制度支援信託は、
遺言がある場合には利用できない

という欠点があります。


ただ、遺言があるかどうかは、
分からないことが多いのも事実です。


それを知らずに後見制度支援信託を
してしまうと、問題が起こりえます。


信託財産となる金銭については
被後見人本人のものではなくなり、
相続財産からも除外されます。


となると、
遺言でその財産を渡す人がいる場合、
相続財産を処分したということになり、
遺言が無効になることも考えられます。


遺言があるにもかかわらず
遺言に記載された財産が
後見制度支援信託の対象となった場合、
どうするべきかということは
今後も議論の余地ありです。

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任意後見制度の活用も視野に入れる


特に会社経営されている方は、
後見・保佐類型に該当すると、
取締役の資格喪失原因になります。


しかも、株式の権利行使もできなくなり
ひとり株主の会社だとたちまち経営も
回らなくなってしまいます。


そのようなことを回避するために
任意後見制度の活用
も選択肢のひとつです。


任意後見制度は元気なうちに
契約を結ぶことができるので、
自分の財産をどうしたいのか、
意思をハッキリさせることが出来ます。


任意後見契約を締結する場合は
公正証書遺言もセットに作る場合が
多いです。


ただ、任意後見契約の効力が発生した際、
任意後見契約に基づき任意後見人が
被後見人に代わって議決権を行使できるか
については議論があります。


それでも、
任意後見契約を締結することは
会社経営について、
リスク対策のひとつです。

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まとめ


後見制度支援信託は、後見人の使い込みを
防ぐ趣旨
で始まりました。


ただ、使い勝手が良くない場面も
出てきます。


中小零細企業の経営者の場合は、
リスク対策として任意後見制度の活用
考えるといいでしょう。


参考書籍

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司法書士・行政書士 桐ケ谷 淳一

鉄道(乗り鉄・撮り鉄両方)と麻婆豆腐・担々麺をこよなく愛する司法書士・行政書士です。
ひとり会社設立、副業・複業、小さな会社の企業法務の分野を得意としています。
1977年1月 東京生まれ東京育ち
2000年 日本大学法学部法律学科卒業
2004年 司法書士試験合格
2005年 行政書士試験合格
2007年 東京都江戸川区葛西駅前にて司法書士事務所・行政書士事務所を開業
2017年 平成27・28年施行改正会社法・商業登記規則、役員変更登記の注意点(株式会社レガシィから)のCD・DVDを出しました。

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